八千代リハビリテーション学院

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ヤチリハのブログ

装具を着けるとなぜ歩きやすいのか

さて、皆さんこのような経験がありませんか?ブーツを履いて出かけた先でトイレに行きたくなったが、駆け込んだトイレが和式便器で、しゃがめずに困ってしまった・・・・硬い素材で出来たファッション性の高いブーツ、スケート靴、スキー靴、安全靴、登山靴というように足首が動きにくい靴を履くとしゃがみにくい事が経験的に分かると思います。(図1)

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図1 しゃがんだ姿勢です。脚の付け根の関節(股関節)、膝の関節、足首の関節をそれぞれ大きく曲げることでしゃがむことができます。

このように足首の動きを固定することは、日常生活において多くの支障をきたしますが、実は都合の良い場合もあります。それはこれからお話しする「下肢の支持性」という効果です。つまり下肢の関節の動きを固定すると、脚を伸ばす力(体重を支える力)を必要としなくなり、結果として疲れにくいということです。

例えば、週末の行楽でスキーを楽しむ場合は、泊り掛けや1日中など比較的長い時間をかけ、時間を忘れたかのように夢中で楽しみます。しかし、1日じゅう中腰の姿勢を強いられている割には、不思議なことにさほど疲れを感じません。これが同じ中腰姿勢を強いられる草むしりや稲刈り・田植えといったような作業ともなると足腰が辛くてたまりません。疲労感を左右する要因として、その行った作業が楽しいか否かによって疲労感が異なるかもしれませんが、もう一つ大事な要因は、スキー靴による足首の固定が挙げられます。草むしりもスキーも同じ中腰姿勢ですが、スキーは足首を固定しているので楽なのです。同じような例として、本格的な登山靴が挙げられます。以前にプロの登山家とお話しする機会があったとき、登山靴について尋ねると「重装備の登山では軽量素材で出来た登山靴(トレッキングシューズ)より、丈夫に出来た本格的な登山靴のほうが疲れにくい」という言葉がありました。これにも疲れにくい要因はいくつか考えられますが、大事なことは・・・・もう皆さん、お分かりいただけましたよね。登山靴は固い革が足首まで覆い、足首の動きを固定することにより、いわば、登山靴が重たい装備や体重を支えているのです(図2)。

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図2 ある冬山の登山風景 8000m級の登山では山頂手前で背負う荷物の重量は20キログラム以上という。空気が薄い分、相当体力的に厳しいと思います。

話は回りくどくなりましたが、脚につける装具(下肢装具)も前述と同じような目的があります。下肢装具は怪我や病気の後遺症で立ったり歩いたりすることができない場合に使用するもので立ちやすく、歩きやすくするための福祉用具のひとつです。例えば、膝関節を伸ばす力が弱くても、足関節の動きを固定することにより、筋肉に代わって支持性を維持することができます。これを短下肢装具といいます(図3左側)。この装具はしゃがむことは難しいですが、座ったり歩いたりすることができるので、日常生活で使用できる便利な装具です。但し、足関節だけの固定では支持性には限界があります。「全く力が入らない」といったように脚の力がとても弱い場合は足関節と膝関節の両方を固定することにより、より強度な支持性を得ることが出来ます。これを長下肢装具といいます(図3中央)。 力が入らない部位が脚全体から骨盤まで広範囲に及ぶ場合には、股関節(脚の付け根の関節)・膝関節・足関節の3つの関節を固定する装具(骨盤帯付き長下肢装具)もあります(図3右側)。長下肢装具や骨盤帯付き長下肢装具は、動かない関節が多いので日常生活ではあまり使用されません。立ったり歩いたりするリハビリをする目的で使用されることが多い装具です。

 以上のように装具を着けて歩くということは、健常な人が着けても通常は歩きにくいだけですが、下肢の支持性を失った障がい者にとっては、再び歩くことが出来るために無くてはならない必須アイテムなのです。

図3図3-1図3-2

3 下肢装具の種類 左側から短下肢装具、長下肢装具、骨盤帯付き長下肢装具